過去のテキスト-光島さんへのメール2

こんばんは、今村です。

過去のテキスト、第二弾お送りします。

こちらは、2011年、僕にとっては初の大きな舞台になった資生堂ギャラリーでの個展の公募に通った際に、その発表がされるサイトに寄せた短いテキストです。
でも、現在に至るまで自分の中では大事な感覚を的確に述べている気がします。

このような機会を頂き大変嬉しく思っています。この文章を書いている途中、雨が降り出したのですが、夜で外が見えず正確には雨音がしだして気温と湿度が変化したのを感じた、とでもいうべきで、雨に限らず対象を知覚するにあたり人間のすべての感覚がいつも満たされているわけではありません。日常において、光、音、味、匂い、皮膚感覚などの組み合わせの、その欠け方により対象との距離感は変化し、物ではなくてむしろその変化する距離の中にこそ美しさのようなものが生まれるのではないかと感じています。

ここまでです。

もう一つ、短いテキストをお送りします。
2016年3月に行った、京都のアートスペース虹での個展に寄せたテキストです。
この頃は(今もですが)、展覧会と季節をよく考えていました。

バケツに氷が張ること。降り落ちる雪が雨に変わること。夜に沈丁花の匂いを嗅ぐこと。白木蓮が咲くこと。廃番になったもう手に入らない画材で絵を描くこと。
土地を移動することと同じで、それまで馴染んでいた空気が変わるため、季節が変わる時期は身の回りの環境それ自体への気づきが多くなる。その空気は予兆と喪失をはらんでいて、生み出されるものと消え去っていくものの絶え間ない流れが色濃くなるその場所で、世界のその確かさを、あるいは不確かさを、確認する。

ここまでです。
このテキスト、最初の「バケツに氷が張ること」から「廃番になったもう手に入らない画材で絵を描くこと」までは、その展覧会で展示した複数の作品のそれぞれのテーマやモチーフでした。

今村遼佑