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「ねじれの位置と、木漏れ日」

「五月のそよ風をゼリーにして持つて来て下さい」という立原道造が病床で云ったという言葉をもとに、今年5月の展覧会に向けてゼリーみたいな絵のシリーズを描き始めた。すぐに過ぎ去ってしまう瞬間的なものを留めること。試作するなかである日、逆に光沢がなく不透明なものを描いてみたら抹茶羊羹みたいな絵ができた。ゼラチンと寒天という媒体の違いで生まれる差異。

木漏れ日の光や、風に揺らぐカーテンから差し込む光を計測し、留める。

ワルシャワに滞在していた時、大学のある一つのクラスに参加していたのだが、そこで出された、過去の参照とか歴史との対話とか、確かそんなテーマの課題で作った作品。異邦人としてのその土地の上にいること。存在と不在と、介入するレモン。

名古屋港にあったBotão Galleryの押し入れにあった振り子時計を、そこで個展をした時に、いいなあ、と言っていたら、その後建物が取り壊しになった時に送ってくれたのだった。ずっと止まったままだったはずだけど、アトリエで動かしてみたら、不安定ながらも動きだした。その上に、ワルシャワの古本屋にあった古いゼンマイ時計をそっと置く。

どこかのことを考える。行ったことのない遠くのことと触れたことのない部屋の片隅のこと。

中学の頃、数学の授業で空間上に存在する2つの直線は、同一の平面上にあるか、並行か、ねじれの位置かのどれかだと習った。ねじれの位置にあるものはどこまで伸ばしても決して交わらない。無数に存在するねじれの位置の直線。

でも、そこに斜め上方に光源を置いたとする。直線は地面の上で影として重なりあうだろう。無数の関係ないものたちが織りなす影の中で、一本の直線になるところを想像してみる。

 

 

 

 

個展「ねじれの位置と、木漏れ日」
2021年11月6日(土) – 12月25日(土)
場所:See Saw gallery + hibit
撮影:城戸保(最後の2枚は除く)